〜ひそやかに咲く名も無き花〜

思考整理、時々ポエマー。自作です。著作権フリーではありません。

夢物語シリーズ②

『海はどこだ』


何をしてたのか、なぜここにいるのかわからない。帰りたい。いや、どこへ?

 

駅を目指せば見つかるかもしれないと思ったが、方向もわからぬまま 深夜の住宅街を彷徨っている。


何かと失敗が続いて何もかも嫌気がさし、飛び出して東にひたすら車を走らせた。
までは良かったが、ここがどこなのか皆目わからない。


そうだ、スマホだ。左手と鎖で繋がれているのではないかというくらい肌身離さないスマホだ。


見当たらない。あれに全てがある。
スケジュールも好きなことも嫌いなことも、全てがあの中にある。


どこにいったのだ?
他人に見られたら終わってしまう。何もかもがあの小さい物に閉じ込めてあるのだ。


あの小さいものは便利だ。秘密は全部あの中だ。失くすわけにはいかないのに…


しばらく探してはみたが あきらめた。
それすら もうどうでもいい。
何にたいしても気力が湧かない。


忙し過ぎたのだ。
電話が鳴らなければ もう客のつまらない一言に怯えなくて良い。それでいい。

 


このまま東に進んでみるか。
太陽が昇る頃には 海が見えるかもしれない。

 


場面は変わり 山の中を歩いている

 

 

どこだかわからないが 喉がかわいた。道の先に展望台らしいものがみえる。

 

朝日がもう顔を出しそうな明るさだ。
海は見えない。海に行きたかった。


山の景色もいいもんだな。登ったのはいつぶりだろうか。
急に険しくなり一足一足が重い。
いつの間にか崖を登っていた。
近くのように見えた展望台は遥か先だ。
苦しい。苦しい。苦しい。
掴んだ手を離せ。

そうだな、離せばもうラクになる。

 

 

場面は変わり 砂浜の上に座っている。

 


波の音が心地よいメロディーを奏でている。
やっと辿りついた。眠ろう。癒しの音に包まれながら。