〜ひそやかに咲く名も無き花〜

思考整理、時々ポエマー。自作です。著作権フリーではありません。

夢物語シリーズ④

『朝食』


フライパンにベーコンを広げその上に卵をおとす。蓋をしてカットしたフランスパンをトースターへ入れ 手際良くサラダを皿に盛る。
ドリップコーヒーのいい香りがキッチンを包む。


私は誰かと笑い合いながら朝食を食べていた。
お腹が満たされて カップを両手に持ち しみじみと幸せを…


あれ?おかしい。
私は自分の姿を空から眺めているのだ。
ついさっきまで確かにあったカップの温もりも感触もない。


突如、宇宙まで連れて行かれそうな勢いで背中から引っ張ぱられ力にあらがう。
まだ、まだだ!まだなんだ!
私はそちらには行かない行きたくなんかない。


壊さないで幸せな空間を
奪わないで
泣きわめく声が虚しく響く


力から解き放たれ我にかえる。私は一人暮らしだ。相手もいない。
あそこにいる人は誰だろうか。とても優しい人。とても安心できる人。


ひょっとして未来を見せてくれたのだろうか。
いや、そんなわけないな。


そうか、願望か。
私は無意識にあんな生活に憧れているのだろうか。私は天から あの幸せそうな空間をただぼんやりと眺めていた。あの場所に戻れないことがわかり涙が静かに頬をつたった。