〜ひそやかに咲く名も無き花〜

思考整理、時々ポエマー。自作です。著作権フリーではありません。

別れを惜しむ恋愛

携帯小説風の読み物です。※
 

1.疑似恋愛


【擬似恋愛】の中で、渡辺莉央と上条守が2週間をともに過ごし、つくりあげた短編小説が出来上がった。
編集長の計らいと、ちょっとしたイタズラ心に翻弄された二人だったが、無事に終ったようだ。
「『別れを惜しむ』って意味がねぇ。狙いと違うわ。こうきたか。年齢のわりに初々しいけど、初めてだからね。こんなもんかな。よくやった。」
編集長はやや辛口だったが、オッケーは出してくれた

「守くん、できあがったね。やっと解放されるわ~。」
「莉央さん、あの。。。付き合いませんか?」
「え?唐突に。」
「終わったら言おうと思ってたんです。」
「うん。私も。」
新しい恋も始まったようですが、それはさておき、本編のはじまり。

 

2.出張

3日間開催されるイベントに参加するため、それぞれの場所で出張を命じられた二人。

準備や後片付けを含め一週間の泊まり込み予定。

開催地付近のウィークリーマンションが手配されていた。

一人は千葉の渡瀬涼子(ワタセリョウコ)
「課長、行ってきます。」
「明日移動だったね。任せたよ。横浜と東京と君、5人のチームだ。しっかりな。」
「はい。」
同期のかなえが近づいてきた。「宿泊先の予約確認しといたよ。これ地図と書類ね。」
「ありがとう。かなえ 気が利くから助かる!」

もう一人は、横浜の渡瀬誠(ワタセマコト)。

同じように出発したのだった。
日曜日、この二人は204号室で、一人の男を前にして呆気にとられていた。

 

3.相部屋

「申し訳ございません。当社の手違いでご迷惑を。」
「同じ会社で苗字が一緒、それが理由って。とにかく別の部屋用意して。」
「それが大変難しい状況で。」
「じゃあホテルでもいい。」
「このイベントで近隣は全て空きがなく、ちょっと離れれば若干空きが…」
「過密スケジュールで通うのはムリなんです。」
「あの、僕から提案が。」
「え?」
「よければ一週間、相部屋しませんか?この人も困ってるし、代わりの部屋もないようだから。」
「あ、相部屋?そんな、一週間だけど、それ困る。」
「僕たちハードスケジュールですね。寝に帰る時間しかなさそうです。2部屋あるし、鍵もついてて安全です。妥協しませんか?」
「そうしていただけると、当社は助かります。もちろん、宿泊代、備品などサービスでさせていただきます。」
そういうわけで一週間の相部屋が決まった。

「僕は渡瀬誠。強引でしたね。すみません。」
「渡瀬涼子です。ごめんなさい。あなたを信用できないわけじゃないけど。」
「さてと、僕は出かけます。帰りは夜中になりますが、迷惑にならないようにします。」
「お互い、あまり気を使わないようにしましょう。」

 

4.日曜日

二人ともネット上でつぶやいている。もちろんお互いのことは知らない。

涼子『超信じらんない状況発生!なんで相部屋?わけわかんないよ。最悪』
誠『ひょんなことから、一週間の相部屋となる』
涼子『荷物片付け完了!相手は出かけた。私も夕飯と朝ごはんの調達に出発しよう♪』
涼子『定食屋なう。ここのオムライス美味しい!幸せ♪』
誠『久々に友と合う。お互い変わらない。』
涼子『コンビニおにぎり買って帰宅。さてお風呂にしよ。ジャージだけど、まぁいいか。』

涼子『共同スペースにいると緊張する。でも部屋に引きこもるのもツマラナイ。一週間は長いよ。明日に備えもう寝ます。』
誠『楽しかった。また一週間後に会う約束をした。明日から頑張ろう。』

 

5.月曜日

涼子『オハヨー。目覚めも化粧ノリもばっちり。朝ごはんご馳走になる。料理デキル男ってどうよ?美味しかったからいいか。行ってきます。』
誠『おはようございます。イベント準備初日!行ってきます』
涼子『出だし好調!いいメンバーでよかった。お昼は親睦かねてランチ。カルボナーラ美味しかった♪』
誠『実にいいメンバーが揃った。イベントも成功させよう』
涼子『夕飯は用意されたお弁当。ボリュームあって美味しい。仕事の合間にそれぞれ食べる。5日間同じ弁当じゃ飽きそう。』
涼子『帰宅なう。ハードだった。疲れた。』
誠『今日の仕事終り。少し時間つぶして帰ろう。相部屋は気を使うな。1時間くらいで大丈夫だろうか』
涼子『今日のお風呂上がりの一杯は新発売のビール。イケる♪ 相手は用事と言ってたけど、気を使ってるのかな。おやすみなさい。』
誠『帰宅なう。もうお休みのようだ。時間つぶしは一時間でいいだろう。』

 

6.火曜日

涼子『オハヨー。今日も朝ごはんにオヨバレ。毎朝作ってくれるらしい。片付けは私がするようにした。先に出てったよ~。私もいそがなくちゃ!』
誠『清々しい朝。誰かと一緒の朝ごはんてのもいいね。行ってきます』
涼子『遅めのお昼。お弁当なう。仕事ミスった~凹む。彼がフォローしてくれた。助かった!』
涼子『今日の任務完了!ミスった分も取り戻せた。明日からいよいよイベント。』
誠『この飲み屋は なかなかいい。毎晩ここにしよう。』
涼子『今日の一杯はスパークリングワイン♪明日からの前祝いてきな(笑) 相手は今日も遅い。飲むの好きなのかな。おやすみなさい。』
誠『おやすみなさい。いい夢を。』

 

7.水曜日

涼子『オハヨー。今日の朝ごはんも美味しかった。行ってきます。』
誠『おはようございます。片付けのきちんと出来る人、仕事もデキルわけだ。イベント初日、行ってきます』
涼子『いよいよイベントはじまります。たくさんの来場、お待ちしてます♪』
涼子『お弁当なう。午前中、いい出だし。M君がテキパキしていて仕事やりやすい。』
誠『出だし好調。彼女の説明はわかりやすく 人気がある。僕も頑張ろう。』
涼子『イベント終了。みんなで夕飯のお弁当なう。これから明日の打ち合わせと準備。早く帰れそう。』
誠『彼女に毎晩どこへ行くのか聞かれてしまった。ただのお酒好きなことにしておいた。今夜も時間つぶして帰ろう。』
涼子『お酒好きってウソ?気を使われてる。どうしよう。』
涼子『今夜の一杯はカルアミルク♪甘いのが欲しかった。あ、相手が帰ってきた。』

「お帰りなさい。」
「ただいま。今夜も美味しいお酒でした。」
「酔ってないですね。」
「えぇ。明日もあるし、軽~く。」
「私に気を使ってるんでしょ?ごめんね。」
「違いますよ。外で飲むのがいいんです。明日もあるし、おやすみなさい。」

 

8.木曜日

涼子『オハヨー!今朝もごちそうさま。行ってきます。』
誠『イベント二日目の朝。いつも美味しそうに食べる人っていいね。行ってきます。』
涼子『今日もはじまります。たくさんの人がきますように♪』
涼子『お昼。今日のお弁当は違うとこのだ。カロリー控え目なのに、この満腹感♪ 午後もファイト!』
誠『どうやら彼女はここでつぶやいてるようだ。僕はいいそびれた。』
涼子『今日もお仕事、無事に終わりました。』
涼子『帰宅なう。』
涼子『M君は今夜も寄り道。優しいね?この胸のモヤモヤはなんだろう?』
誠『今日も一杯ひっかけて帰る。うん美味い!』
涼子『今夜はハイボール♪明日も全力投球します。おやすみなさい。』

 

9.金曜日

涼子『オハヨー。誰かと一緒に過ごすと緊張感あるね。女子力アップしてるかも(笑)』
誠『おはようございます。僕の部屋以外はきれい。どうも片付けは苦手だ。』
涼子『イベントラストデー!ふぁいと』
涼子『今日の来場者多い。めちゃ大変。お弁当しっかり食べて休憩終り!』
涼子『終わった!感無量。片付けは明日にして打ち上げ。ヤッホー♪』
誠『終りました。今から打ち上げです。』
涼子『楽しくてお酒がすすむ。料理も美味しいよ♪』
涼子『おひらきの時間。明日の片付けもあるから みんな早めの帰宅。』

「ね、一緒に帰らない? タクシー割り勘で。」
「そういうことなら、ご一緒しましょう。」
「なんだかヘンな感じよね。彼氏でもないのに 同じ部屋に帰るって。今いないから構わないけどさ、誠くん彼女は大丈夫?」
「あぁ、それなら大丈夫です。僕もいませんから。」
「モテそうなのにね。恋より仕事?」
「うーん、仕事は面白いですけど、彼女も欲しいなぁ。欲張りですから。ははは。」
二人とも意識してしまい話をそらした。

涼子『もっと知りたいな彼のこと。これって恋?』
誠『理想的な人というのは存在するんだな。』

 

10.土曜日

イベントの片付けは思ったよりも早く終わった。

東京の3人は会社へ戻り、誠は友達との約束で出かけ、涼子は部屋へ戻ってきた。

涼子『荷造り終了。ちょっと出かけよ。』
涼子『駅ビルをぶらり。スカートに一目惚れしてゲット!夕飯はピザやさん。なかなかいける。』
涼子『今日 家に帰れば良かったかな。なんでも終わってしまって退屈。とりあえず飲も。今夜はビールとワイン♪』

「涼子さん、起きて下さい。風邪ひきますよ。」
「ん~ん、ん?わ、やだ。こんなとこで寝てた。」
「明日は10時に待ち合わせでしたね。」
「えぇ。帰るの早かったね。」
「それが、あいつ 彼女連れてきて、僕はすっかり邪魔者で。」
「あは。飲み直す?といっても、買いにいかないとないけどね。」
「僕、買ってきますよ。」

 

11.別れ

「おはようございます。」
「私、昨夜大丈夫だった?」
「えぇ?」
「楽しく飲んで、途中で記憶が…」
「あはは。普通でしたよ。」
「ちゃんとしてた?記憶ないって怖いね。」
「二日酔いは?」
「ううん、大丈夫。でもないかな。誠くんの朝ご飯も最後だね。毎朝ありがとう。」

誠『しっかりしてる人の意外な一面。かわいい人。』
涼子『記憶飛んでも ちゃんとしてた自分が怖い。ウソなのかな?恥ずかしい。』

10時、玄関前。初日に会った管理会社の担当者と二人。
「当社の手違いでどうもご迷惑おかけしました。」
「ほんとよね。」
「申し訳ございません。」
「忘れ物はないです。確認しました。これ鍵」
「これ、僕の鍵も」
「ありがとうございました。」

「じゃ、行こうか。」
「はい。」
「いい天気だね。」
「コーヒーでもどうですか。」
「え?」
「あ、いや、忙しいですよね。」
「・・・いいよ。」

二人はコーヒーショップで向き合っていた
「あの、また会えますか?」
「仕事また一緒したいね。」
「じゃなくて。」
「え?あ、あぁそか。いいよ。ていうか、いいの?」
「このまま別れるのは惜しくて。涼子さんともっと話したい。」
「うん、私も。」
こうして二人の恋が始まった。

 

~完~